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人生のコツは 役割期待の 守破離 〜95歳の母を見て想う〜
人生のコツは 役割期待の 守破離 〜95歳の母を見て想う〜
こんにちは。クリニック院長の高橋です。
日々、たくさんの小さなお子さんたちと向き合ってきた私ですが、
先日、95歳になる私の母が、
人生の最後の時を穏やかに迎えようとする姿をじっと見つめていました。
呼びかけにかろうじて目を開け、
こちらの言葉をそのままオウム返しする母。
その姿を見ているうちに、
私の心にはある言葉が浮かびました。
「人生のコツは、役割期待の、守破離(しゅはり)なのかもしれない」と。
私たちは生まれてから、
誰かの「子」になり、
「学生」になり、
「社会人」になり、
「親」になり……と、
社会や周囲から求められるたくさんの「役割」を背負って生きていきます。
- 「守」:与えられた役割を一生懸命に全うする時期。
- 「破」:そこに自分らしさや工夫を少しずつ加えていく時期。
私の母もまた、95年という長い旅路の中で、
娘として、妻として、そして母としての役割期待を、
時に悩みながらも、精いっぱいに生きてくれた人でした。
そして今、ベッドで静かに横たわる母は、
それらすべての役割や責任の鎧をきれいに脱ぎ捨てていました。
そこにあるのは、言葉による難しい理解も葛藤も何もない、
ただただ透明で、クリアな一つの命です。
小児科医としての私の目には、
その姿が、生まれたばかりの赤ちゃんの無垢な反応と、驚くほど重なって見えました。
「あぁ、母は今、すべての役割期待から解放されて、
究極の『離(り)』の境地にたどり着いたんだな」
そう腑に落ちたとき、言葉を探す必要はなくなりました。
ただ手を握り、呼吸を合わせているだけで、
私が子供の頃にいつも私を包んでくれていた、
あの母のいちばん穏やかな笑顔が、
今、目の前の母の顔にそっと重なって見えた気がしたのです。
人は長い旅をして、
また始まった場所のような、
優しく純粋な場所へと還っていく。
母がその命をもって教えてくれた
「守破離」の結びの美しさを、これからも大切に胸に抱きながら、
私はまた、目の前の新しい命たちに向き合っていこうと思います。
お母さん、たくさんの「ありがとう」を込めて。