生きやすくなる心理学
秋の朝、足るを知る
秋の朝、足るを知る
循環器医として、当直明けの覚醒を促すために、
いつの頃からか朝にシャワーを浴びる習慣がある。
近年、秋が短くなっているが、秋は嫌いではない。
今朝も目覚めの朝風呂で一日をスタートした。
湯船につかりながら、ぼんやり空想にふける。
冷たい秋の空気が肌を撫でる。
少し熱めの湯に身を沈めると、温かさが身体に広がる。
自分と湯の境界が、柔らかく揺れる。
ここで、少し思考を整理してみる。
もしAを現実世界、Bを人の認知とするなら、
A=Bでは成立しない。
常にCというズレが加わることで、現実と認知の間に差が生じる。
すなわち、
A = B + C
このズレCによって、時間や変化が生まれる。
さらに連続すると、
A = B + C → A′ = B′ + C′ → …
気づくとは、このズレCを抱えたまま、次のA′を生きることだろう。
「足るを知る」とは、
B′に欠乏感を抱き、C′を追い求めることではない。
すでに存在するA′、すなわちBにCが加わった状態に気づくこと。
今ここにある自分の温度、世界の呼吸に触れること。
メタ認知は、心の輪郭をやわらかくする力である。
ズレCを拒まず抱きしめ、次の瞬間へ進む。
そしてその輪郭の内側に、
ほんのわずかな、温かい幸福が息づく。
メタ認知力で幸福は感じられる。
