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理系の心理学② 脳モードを切り替えるには
脳のモード切り替え
― 視覚=未来予測、聴覚=今、体性感覚=存在 ―
ある弓道の動画を偶然目にした。
まさにセレンディピティだった。
そこでは「聴覚を研ぎ澄ますために僧帽筋中部を使う」という説明があった。
その瞬間、理論が身体とつながった。
1.感覚は役割が違う
◆ 視覚:未来予測系
視覚は情報量が圧倒的に多い。
処理しているのは:
- 距離
- 速度
- 軌道
- 変化率(d/dt)
これは本質的に「予測」のシステムである。
脳は視覚を使って常に未来を計算している。
視覚優位になると:
- 不安が増える
- 先読みが止まらない
- 思考が微分的になる
未来へ、未来へと飛ぶ。
◆ 聴覚:時間連続系
聴覚は振動であり、時間軸に沿った情報。
- 周波数
- リズム
- 残響
- 左右差
これは“今この瞬間に流れているもの”しか扱えない。
聴覚優位になると:
- 呼吸に同調しやすい
- 現在に留まりやすい
- 積分的処理が働く
未来を予測するより、
今を感じる方向へ向かう。
◆ 体性感覚:存在系
さらに深いのが体性感覚。
- 足裏の圧
- 重心
- 筋緊張
- 重力との関係
これは時間ですらない。
「ここに立っている」という存在の情報。
予測も思考も介さない。
2.なぜ視覚過多で、脳が“モヤる”のか
視覚情報が多すぎると、
脳の予算(Brain budget)は一気に消耗する。
とくに
- ASD傾向
- 不安傾向
- 完璧主義
では視覚S/N比が低下しやすい。
ノイズまで全部処理してしまう。
その結果、
- 頭が重い
- 思考が止まらない
- 焦燥感
が生じる。
3.僧帽筋中部と感覚モード
弓道で語られていたのは、
「僧帽筋中部に力を入れる」という操作。
解剖学的に見ると:
- 肩甲骨内転
- 胸郭安定
- 頸部過緊張の抑制
が起こる。
頸部が安定すると、
- 前庭系の過活動が落ちる
- 視覚依存が減る
- 聴覚・体性感覚が優位になる
結果として
視覚中心の予測モード
↓
聴覚・体性感覚中心の存在モード
へ切り替わる。
4.脳のモード切り替えモデル
整理すると:
モードA:視覚優位(未来予測)
- 微分的思考
- 不安
- 先読み
- 交感神経優位
モードB:聴覚優位(現在)
- 呼吸同調
- 時間連続性
- 積分的処理
- 自律神経安定
モードC:体性感覚優位(存在)
- 重心安定
- 重力との一致
- 思考停止
- 安全感
弓道は、このモードB〜Cに入る訓練と言える。
「当てる」のではない。
「整うと当たる」。
5.臨床的応用
視覚過多社会において、
- スマホ
- 高速情報
- 常時通知
は、常にモードAを刺激している。
もし頭がもやるなら:
- 肩甲骨を寄せる(僧帽筋中部)
- 呼吸音に注意を向ける
- 足裏の圧を感じる
これは単なる体操ではない。
脳のモード切り替えである。
6.まとめ
視覚=未来
聴覚=今
体性感覚=存在
未来に飛びすぎた脳を、
今と大地に戻す。
偶然出会った弓道の動画は、
理論が身体に落ちた瞬間だった。