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秋の夕暮れとマーゴの湯のシルク風呂
先週、母が逝去し、無事に葬儀を終えました。
張り詰めていた緊張の糸が切れたのか、ドッと押し寄せてきた疲れを癒やすため、
久しぶりに近くの大衆浴場「マーゴの湯」へと足を運びました。
そこで何気に目についたのが「シルク風呂」です。
お湯がミルクのように真っ白に見えるのは入浴剤ではなく、すべて超微細な気泡。
湯船に満ちる無数の泡が、毛穴の奥の汚れまで優しく吸着して落とし、
その乳化作用でお肌をなめらかに包み込んでくれます。
白い泡のベールに身を委ねながら、ふと思い出しました。
そういえば昔、三洋電機から「洗剤のいらない洗濯機」という画期的な製品が発売され、
大きな話題になったものの、いつの間にか市場から消えてしまったなぁ、と。
実はあの洗濯機も、超音波によって水の中に湧き上がる、目に見えないほど微細な気泡の力を利用していました。
洗剤という化学物質に頼るのではなく、泡が生まれ、弾けるという物理的な力で汚れを引き剥がす仕組み。
形を変え、時代を超えて、いま目の前のお湯に満ちている泡と、それは本質的にまったく同じ原理なのです。
医師の視点から見ても、この「泡の力」は非常に理にかなっています。
肌の乾燥やトラブルの多くは、ナイロンタオルや強い石鹸で「ゴシゴシ擦りすぎる」ことで、
肌のバリア機能が壊れてしまうことから始まります。
シルク風呂のように、肌を擦ることなく、ただ無数の気泡が弾ける力だけで汚れを浮かせる入浴は、
肌のバリアを保ちながら、必要な潤いを残すことができる優れたスキンケアと言えます。
当院でも、肌の乾燥に悩む患者様には「とにかく擦らないこと」をお伝えしていますが、
水と空気から生まれる泡の優しさは、現代の理想的な医療のアプローチにも通じるものがあります。
ひとしきり体を温めた後、露天風呂へと移動しました。
湯船から立ち上る湯気と、パチンと静かに消えていく泡の行方を追いながら、
ゆっくりと夕焼けの空を眺めていると、日が暮れるのがずいぶんと早くなっているなぁ、と感じます。
四十九日を迎えるまでの間、人の魂は一体どこにいるのだろう――。
湯面に生まれては消えていく、あの儚い泡のひとつのように、
まだこの空のどこかで優しく私たちを見守ってくれているのでしょうか。
季節の移り変わりとともに、母のいない新しい日常が静かに始まろうとしています。
心も体もリフレッシュしたところで、
また明日から地域の皆様の健康を守るため、日々の診療に丁寧に向き合ってまいります。
