母と子の漢方
スマホはドーパミンの檻
スマホはドーパミンの檻
― 自然に還るための小さな祈り ―
気がつけば、私たちの指先は、
無限に光る画面の上をさまよっている。
そこには、退屈も、孤独も、沈黙もない。
ただ、次の刺激と、次の快楽が待っているだけだ。
スマホは、私たちの脳をやさしく撫でながら、
ドーパミンを一滴ずつ垂らしていく。
ほんの少しの「いいね」や「通知音」が、
私たちをまた、次の瞬間へと駆り立てる。
刺激と反応、まるで、パブロフの犬。
思考は短くなり、心は浅くなり、
沈黙の時間はどこかへ消えていく。
けれど、気づけば、心は乾いている。
考えることよりも、反応することが習慣になり、
感じることよりも、比較することが癖になっている。
本当の豊かさは、光の中にはない。
それは、風の音や、朝の光、人のぬくもりの中にある。
自然は、決して私たちを刺激しない。
ただ、静かに包み、沈黙の中に答えを返してくれる。
スマホを置くとき、
私たちは、世界ともう一度つながる。
心の余白が戻り、思考が呼吸を始める。
そのとき初めて、人は「自分」という自然に還るのだ。