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AIにはなく人間にのみある“不安”のチューニング機構 ― 身体のメンタライゼーション ―
AIにはなく人間にのみある“不安”のチューニング機構
― 身体のメンタライゼーション ―
AIは、世界を「データ」と「確率」でとらえます。
大量の情報を一瞬で処理し、
誤差があっても即座に修正して、最適な答えを導き出す。
しかし、人間はそうはいきません。
私たちは世界を「予測」と「ズレ」で受け取っています。
たとえば、思っていた反応と違う言葉を相手から返されたとき、
脳の中では「予測と現実のズレ」が生まれます。
AIなら、ただ「誤差」として次のデータを学習するでしょう。
けれど私たち人間は、そのズレを“感じる”のです。
胸がざわつく、息が浅くなる、心拍が上がる
――これが「不安」です。
不安は「誤差の感覚」
不安は、脳が「いま起きていることが予想と違う」と知らせるサイン。
つまり、不安とは敵ではなく、
あなたを守るためのセンサー反応なのです。
ただし、その反応が強すぎると、
息苦しさや不眠、焦燥などが起こります。
このとき、多くの人が「不安を消したい」と思ってしまいます。
けれど、不安を無理に押さえ込もうとすると、
自律神経のバランスがさらに乱れてしまうのです。
不安を「消す」より、「意味づける」
大切なのは、不安を感じたときに
「なぜ今、こう感じたのか?」と立ち止まること。
それが、“身体のメンタライゼーション”のはじまりです。
メンタライゼーションとは、
自分や他人の「心の状態を理解する力」をいいます。
そして身体のメンタライゼーションとは、
その“心”の変化を、呼吸・姿勢・筋肉・鼓動といった身体の感覚を通して理解すること。
「今、呼吸が浅くなっているな」
「少し背中が固まっているな」
「この不安は、“うまくやらなきゃ”という緊張からきているのかも」
こんなふうに身体を感じながら、自分の状態を言葉にしていく。
それだけで、自律神経は少しずつ整い、心も落ち着いてきます。
不安は消えるのではなく、“整っていく”のです。
不安のチューニング:予測 × ズレ + 意味
私たちは生きている限り、常に“ズレ”の中にいます。
季節が変わる、予定が狂う、人の気持ちが読めない――
このズレをゼロにすることはできません。
けれど、ズレを意味として受け止めることで、
それは「不安」から「気づき」へと変わります。
もし数式で表すなら、こう言えます:
再構築 = 予測 × ズレ + 意味
予測とズレがあることで、
私たちは世界と再びつながることができます。
不安は、その“つながり直し”のための信号なのです。
不安は「調律のサイン」
AIには、不安がありません。
それは、AIが身体も自律神経も持たないからです。
けれど、人間には身体があります。
身体は世界との接点であり、
不安はその接点を微調整するための“チューニング信号”です。
だからこそ、不安を感じたら、
「壊れそう」ではなく「整えよう」と受け取ってみてください。
深呼吸をして、自分の身体の声を聞いてみる。
その瞬間、不安はあなたを孤立させるものではなく、
**世界と再び響き合うための音叉(おんさ)**に変わります。
不安をなくそうとするより、
不安とともに、世界を感じ直す。
それが、人間にしかできない「チューニング」なのです。
具体的なチューニング方法は、また次回お話します。
クリニックでも診察時に直接お聞きくださってもいいです。